The words of the chefs
料理人たちの言葉
もちろんのこと、美人鰤は料理してこそ映える存在である。
美人鰤は食材として見た時にどうなのか、その声はすばり料理人に聞くべきだろう。
ここでは、実際に美人鰤を料理してくれた “味のプロフェッショナル” の声を通して、美人鰤の価値を知っていこうと思う。
美人鰤は身が繊細で臭みがない。
シンプルな料理にも合うが、アレンジもしやすい。
美人鰤を育てた浪井満洋さんと同級生の水本久史さん。
大分市都町にある「かまえ魚河岸 水元」。蒲江など県南のおいしい魚介を料理にして、食べる人々に幸せを与える仕掛人。美人鰤の応援者のひとりだ。美人鰤の出荷準備が整いだした頃、一番早く自身の店で使うと手を挙げた人物もまた水本さんだった。
水本さんにとって美人鰤は「2人(浪井満洋さん、村松教雄さん)が育てた美人鰤が悪いはずない。近くにいるからこそ、想いはもちろん品質も問題ないと言い切れるだけの信頼関係がある」のだと。
水元の熊谷貴範料理長に美人鰤について訊ねると「美人鰤は身が繊細で臭みがない。シンプルな料理にも合うが、アレンジもしやすい」天然魚と比較して身質の個体差も少ないのも料理人としてはベストだと言う。
水本さんは「自分にできることは、料理を通じて美人鰤を伝えていくこと」だと言う。友人としてだけではなく、料理の世界に携わる者の一人として、「できる限り料理を提供しながら、彼らの美人鰤に対する“物語”や“こだわり”を語っていきたい」と言い切る。
美人鰤は脂がくどくなく、臭さもない。
包丁の入り方も天然に似ている。
日本を代表する酒蔵の澄川酒造場と、2人の漁師(浪井満洋さん、村松教雄さん)を繋いだ立役者でもある田中 博さん。
父は「世界一 佐伯寿司」と名打つ佐伯寿司文化の礎を築いた「第三金波」の先代、「金波」の田中猛雄さん。
そんな猛雄さんの血を継ぐ、金波直系の店「第三金波」大将であり、佐伯の鮨屋を引っ張る存在だ。
田中さんの店ではたくさんの日本酒を扱っているが、その中でも東洋美人は思い入れの深い日本酒だという。
そんな田中さんにとって美人鰤は「その酒粕を使った美人鰤は脂がくどくなく、臭さもない。包丁の入り方も天然に似ている」のだという。
「特A級の天然ぶりがなければ、迷わず美人鰤を使うと思います」とまで美人鰤を評している田中さん。
全国から佐伯の魚と日本酒を楽しみにくるお客様の多い「第三金波」、その大将の言葉には説得力がある。
「佐伯の魚はほんとうに身質がいい。この街ほど寿司職人になるのにいい町はないのではと思う。新鮮な材料はどこにもありますから。やはり漁師さんの水揚げ後の絞めや神経抜き処理の早さなどもあると思う」と言う田中さんの言葉には、美人鰤はもちろん、佐伯の魚と漁師、そのすべてへの愛と敬意が込められている。
美人鰤は、その全身に旨味が詰まっている。
その良さを深く味わって欲しいと、料理人の腕も鳴る。
兄弟で営む佐伯市の波平食堂、店主の平松亮さん、弟の亨さん。
水揚げ後、締めてから1日以内で店に出すものを「DAY0」、さらに寝かせて良い旨味・舌触りを引き出したものを「DAY2」「DAY3」と表現するなど、魚をそのまま提供するのではなく「店側で良さを活かす・引き出す」ことにこだわりを持つ平松兄弟のスタンスは、今日まで多くの人々から愛されている。
平松さんは美人鰤を「全身に旨味が詰まっているから、刺身で食べるのが一番。DAY0の時点で十分美味しい」と言う。さらに加えて「DAY2〜DAY3と日を重ねて美味しさを増すのも美人鰤。東洋美人の酒粕がこの味に繋がっているのだと思うと、美人鰤はまさに奇跡の出会いが生んだ存在かもしれない」と続ける。そのこだわりは刺身だけではなく、煮込みなど、ぞれぞれの料理方法の随所に込められている。
「一般的に魚の内臓部分は好みが分かれるところだが、美人鰤はそれすらも美味しく料理できる」のだそう。
店では東洋美人についても蔵直接の取り引きを実現し、美人鰤とのペアリングで愉しむことをおすすめしている。
「どの魚にも言えることだが、店側で良さを引き出しながらも、それをやり過ぎることで“魚本来の良さがわからなくなる”ことがないよう意識している」という平松さん。美人鰤を作る沢山の人たちの熱量を含め、この味を多くの人に知って欲しい。そのきっかけになれたら、と語る。