「東洋美人」との出会いが生んだ「美人鰤」の未来
教雄さんたちの試行錯誤は、次第に新ブランド「美人鰤」の誕生へと結実していく。
その物語は別途、「
美人鰤とは」と題して余すことなくしたためてあるので、ぜひ読んでもらえると嬉しい。
「美人鰤」の評判は口コミで静かに広まり、別府市内のレストランや、湯布院の有名旅館からも問い合わせが入るようになった。
大分市内の割烹では、それまで取り扱っていたブリをすべて「美人鰤」に切り替えた店もある。
まだまだ販促と言えるほどの活動はしていなかったものの、「旨いブリ」としてじわじわと「美人鰤」が受け入れられ始めた。そんな兆しを感じさせる滑り出しだ。
「東洋美人」との出会い、その酒粕を使用することへの澄川さんの快諾。
これは、互いの共通点に触れ合うことで生まれた、言うならば「共鳴」だったのかもしれない。
「自分のなかでの価値観として、“美しいものは、おいしい”があって、まさにこのブリを見たときに美しいなあと、艶があるなあと感じました。正直あまりブリは食べない方なのですが、極め細かい脂もあり、何切れでも食べれる感じでした」という澄川さん。
あえて美人鰤に合う東洋美人を選ぶとしたら、何ですか?と聞いてみた。
「“地帆紅(ジパング)”かな。東洋美人自体が繊細な味で品の良い旨味。口に拡がる美人鰤の旨味と、この酒のキレ具合が合うと思いますね」と答えてくれた。
出会いは絆に変わる。「東洋美人」と「美人鰤」は、今なお共鳴を続けている。
平成30年6月、「美人鰤」は正式に商標を取り、本格的にブランド鰤合戦の荒波に乗り出した。
そして今日、海の兄と弟がモジャコ(ブリの稚魚)から捕って育て作る「美しい味のブリ」は、いつか、海の向こうで「日本のサムライが育てたすごいブリがある」とニュースになるのかもしれない。山口から世界に羽ばたいた「東洋美人」のように。