養殖漁師が作って売るブランド「美人鰤」誕生
山口県萩市の日本酒「東洋美人」の酒粕を餌に混ぜての養殖が始まった。100g単位で配合率を変えたり、与えるタイミングをずらしてみたりと、試行錯誤をしながら育てていく。
「東洋美人」のように、自分たちも、この浜から世界に通じるようなブランド鰤を育てたい。
教雄さんたちの熱い思いは、周囲の人々を次々と動かしていく。
ちなみに「東洋美人」の酒粕を手に入れる際にも、人との出会いと物語があるのだが、ここでは割愛しておこう。
「東洋美人」との出会いというタイトルで別にしたためているので、そちらでぜひ深く読み込んで欲しい。
新しいブランド鰤の名前は、銘酒「東洋美人」にあやかって「美人鰤」とした。
販促活動に使うロゴマークには、「東洋美人」を作る澄川酒造場の杜氏兼蔵元の澄川宜史さんから“美人”の文字を頂いた。
“鰤”の文字は、大分県漁協下入津支店支店長の山本幹太さんに書いてもらった。
そして12月。稚魚から育てた「美人鰤」はようやく出荷できるサイズになった。ある日、一日の仕事を終えて帰宅した教雄さんは「美人鰤」を食べてみた。期待と不安で気が急いて、いつもなら帰ってすぐに入る風呂も忘れていた。
「腰を抜かしそうなぐらい美味かったです。さすがにここまで味が変わるとは思ってなかった。すぐ満洋さんにLINEしました。このブリ美味いっす!って」
満洋さんにLINEでメッセージを送ると、ものの1分で即返信が来た。
「用事放り投げてすっ飛んでいった(笑)」
この日村松家には誰もいなかった。子どもの行事があり、家族全員で佐伯市内に出かけていたのだ。
「美人鰤」をふたりで一緒に食べた。満洋さんは「涙が出た」という。
ついに、自分たちの新ブランドが歩き始めた。